残業管理は大丈夫?36協定と変形労働時間制を中小企業向けにわかりやすく解説

目次

「36協定を出しているから残業は大丈夫」と思っていませんか?

人手不足などを背景に、

「繁忙期だけ残業が増えてしまう」
「36協定は提出しているので問題ないと思っている」
「忙しい月と暇な月で勤務時間を調整したい」

という中小企業も少なくありません。

しかし、36協定を締結していれば何時間でも残業できるわけではありません。

また、業務の繁閑に合わせて労働時間を調整できる「変形労働時間制」などもありますが、単純に勤務表を変更するだけで利用できる制度ではありません。

J-Net21が2026年10月に公開した「中小企業に必要な法律知識」でも、働き方改革後の重要な労務管理として、時間外労働の上限規制や裁量労働制・変形労働時間制が取り上げられています。

今回は、中小企業が特に確認しておきたいポイントを絞って紹介します。

1.残業には法律上の上限があります

労働基準法では、原則として労働時間は1日8時間・週40時間までです。

これを超えて時間外労働や休日労働をさせる場合には、労使でいわゆる36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

さらに、時間外労働には原則として、

月45時間・年360時間

という上限があります。

臨時的な特別の事情があり、「特別条項付き36協定」を締結している場合でも、

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働+休日労働は単月100時間未満
  • 2~6か月平均で月80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6か月まで

という上限があります。

つまり、36協定は「残業し放題にする届出」ではありません。

自社の36協定の内容と、実際の勤怠状況が一致しているかを確認しておくことが重要です。

2026年9月から労基署の監督指導が変わりました

ここは今回、特に知っておきたいポイントです。

2026年9月1日から、労働基準監督署による時間外労働に関する監督指導の運用が見直されました。

これまでは時間外・休日労働の時間数に着目し、「月45時間以内に減らしてください」という一律的な指導が行われる場合がありました。

今後は、時間数だけを見るのではなく、特別条項付き36協定などで定めた従業員の健康・福祉を確保するための措置が実際に行われているかを重点的に確認する運用となります。

ただし、これは、

「月45時間を超えて残業させやすくなった」

という意味ではありません。

月45時間・年360時間などの法律上の上限規制そのものは変わっておらず、過重労働による健康障害のおそれが高い場合には引き続き必要な指導が行われます。

企業側としては、

「36協定を提出して終わり」ではなく、実際の労働時間と健康確保措置まで管理できているか

を確認しておくことが大切です。

2.忙しい時期と暇な時期があるなら「変形労働時間制」という方法も

毎日・毎月同じ仕事量ではない会社も多いでしょう。

たとえば、

「月末だけ忙しい」
「夏が繁忙期で冬は比較的暇」
「特定の曜日だけ勤務時間が長くなる」

といったケースです。

こうした場合には、一定期間を平均して週の法定労働時間を超えないように勤務時間を配分する変形労働時間制を活用できる場合があります。

代表的なものとして「1か月単位」「1年単位」などがあります。

たとえば1か月単位の変形労働時間制であれば、1か月以内の一定期間を平均して週40時間以内になるよう設定することで、あらかじめ決めた特定の日に1日8時間を超える勤務を設定することができます。

ただし、

「忙しい日は10時間働いてもらって、暇な日に早く帰ってもらえばOK」

と会社が自由に運用できる制度ではありません。

就業規則や労使協定などで必要事項を定め、制度によっては労働基準監督署への届出も必要になります。

業務の繁閑がはっきりしている会社では有効な制度ですが、導入前に勤務実態や就業規則を確認することをおすすめします。

裁量労働制も2024年からルールが変わっています

裁量労働制とは、対象となる一定の業務について、実際に働いた時間ではなく、労使で定めた時間を働いたものとみなす制度です。

ただし、すべての社員・職種で自由に使える制度ではありません。

専門業務型や企画業務型など対象業務が限定されています。

さらに2024年4月から、裁量労働制を新たに導入・継続する場合には、本人の同意を得ることや同意撤回の手続きを定めることなど、新たな対応が必要になっています。本人が同意しないことを理由とした不利益な取扱いも認められません。

「残業代を減らしたいから裁量労働制にする」といった安易な導入は避け、対象業務や必要な手続きを確認する必要があります。

中小企業がまず確認したいこと

今回の内容から、特に確認しておきたいのは次の点です。

36協定を現在の勤務実態に合わせて締結・届出しているか。

実際の残業時間が協定や法律上の上限を超えていないか。

特別条項を利用する場合、健康・福祉確保措置を実際に実施できているか。

変形労働時間制などを利用している場合、就業規則・労使協定・勤務表が制度に沿っているか。

「昔からこの勤務形態だから大丈夫」と考えず、制度と実際の働き方を一度照らし合わせてみることが重要です。

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